在日韓国人3世の安昌林選手(写真:Christian Fidler/アフロ)

 過去に例を見ない状況で始まった東京五輪だが、いざ始まってみると、日本でも韓国でも、自国の選手の活躍に胸を躍らせる国民が増えている。その中で、在日韓国人3世ながら韓国代表として東京五輪の男子柔道73kg級に出場し、銅メダルを獲得した選手が脚光を浴びている。

 今回、メダルを獲得したのは、在日韓国人3世の安昌林(アン・チャンリム)選手だ。27歳の彼は京都で生まれ、6歳から柔道を始めた。高校と大学で頭角を現し、大学の監督からは日本への帰化を勧められたものの、「韓国人として太極旗をつけたい。国際大会で日本の選手に勝つことが目標」として韓国代表を目指した。

 その後、韓国に渡り、龍仁大学の柔道部に所属し、国内外の大会に出場を続けながら実績を積んだ。そして、1年延期となったものの、東京五輪の舞台に「韓国代表」として立ち、韓国に銅メダルをもたらした。

 柔道中継の際に、韓国MBCのアナウンサーが「私たちが望んだメダルの色ではなかった」と発言。「選手に対する差別」「敬意はないのか」といった非難が殺到したが、その当事者である。

 日本で生まれた在日韓国人で、柔道の韓国代表を目指していたケースと言えば、現在日韓両国でタレントとして活動をしている秋山成勲「秋成勲(チュ・ソンフン)」氏が挙げられる。

 韓国で市役所に勤務しながら柔道の韓国代表を目指したが、在日韓国人に対する差別などから代表になることを断念し、日本に戻った。

 日本へ帰化した秋氏は2002年の釜山アジア大会の81kg級に出場し、優勝を果たしたが、優勝インタビューの際に「代表のために日本国籍を取得したが、自分は韓国人であり、声援を送ってくれた同胞に感謝をする」というコメントを出して韓国メディアからバッシングを受けた。

 その後、秋氏は格闘技に転向し活躍の後、現在では娘と共に韓国内のテレビ番組やCMに出演するなど人気タレントの地位を確立している。