2021年9月25日にログミーFinance主催で行われた、第25回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第3部・株式会社アピリッツの講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社アピリッツ 取締役執行役員CFO 永山亨 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント/ナレーター 飯村美樹 氏

目次

永山亨氏(以下、永山):こんにちは。今日はご視聴いただきありがとうございます。株式会社アピリッツの取締役CFOの永山と申します。

初めての方もいらっしゃるため、事業内容や決算の内容など、細かくご説明したいと思います。資料は第2四半期決算説明会で使用したものになります。はじめに事業内容をご説明し、第2四半期の業績のハイライト、今後の成長戦略に関するトピックスをお話しします。

会社概要①

永山:事業内容です。先ほどご説明したとおり、「セカイに愛されるインターネットサービスをつくり続ける」というミッションを基に事業を運営しています。

会社概要②

永山:大きく2つの事業で成り立っています。1つはWebビジネスのソリューション、もう1つはオンラインゲームのソリューションです。初めてご覧になる方は「SIerなのか、ゲーム屋なのか」と疑問に思われるかもしれません。このあたりの特徴を詳しくご説明していきます。

会社概要③

永山:当社は7月末までが上期なのですが、2021年7月末時点の従業員数は451名です。財務指標は昨年時点の売上高が38.8億円、純利益が1.2億円です。

事業内容・Webソリューション事業①

永山:Webソリューション事業からご説明します。主に、toC向けのサービスを展開しているお客さまのDXをお手伝いしています。「SIerなのかな?」と思われる方も多そうですが、特徴としてはスライドにあるとおりです。

まずは戦略と分析です。お客さまが「こんなサービスを作りたい」と要望された時に、言われたものを作るというより、一緒にクライアントの事業戦略を理解し、ユーザーのシナリオなど、利用に至るプロセスを計画して伴走する、言わばコンサルティングと考えていただければと思います。

次に企画と設計です。お客さまのビジネスモデルに沿ったマーケティング要件やコンテンツ要件など、いろいろなものを一緒に考え設計していきます。その後のステップが、いよいよみなさまがイメージする開発です。お客さまが「作って」と言ったものをそのまま作るのではなく、一緒にサービスを企画した後に我々が開発します。

開発を経て、当然ながらお客さまのサービスがリリースされます。リリース後も運用と保守が必要になるため、これも我々が行っていきます。世の中にはいろいろな開発会社があり、どれか1つの過程に特化しているところが多くありますが、当社ではこれらの工程を一貫してすべて担当しているという特徴があります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):冒頭で「SIerなのか、コンサルなのか」というお話をされています。スライド8ページにもあるように、好循環ビジネスとして「『戦略・企画のコンサルティング』から『システム開発・保守まで』対応」しているとお話ししていましたが、「一気通貫で対応」されることの強みについて、もう少し詳しく教えていただけると、イメージが湧くかと思います。

永山:なぜそこが強いのかについてご説明すると、「このようなサービスを作っていきたい」というお客様の要望は、だいたい要件がふんわりしているのです。

坂本:だんだん進んできたところに「やっぱりこうしたい」などと言い出すと間に合わない、というSIerのお話はよく聞きます。

永山:おっしゃるとおりです。素晴らしいアイデアはあるのですが、そのアイデアをもとに「本当にその市場でそのサービスが刺さるのだろうか」「そのためにどのようなターゲットに向けて、どのようなサービスを作っていけばよいのか」ということまで、最初からきっちり決まっているお客さまは、実はほぼいません。

そのため、ユーザーのシナリオなども一緒に考えます。サービスコンセプトは外さずに「もう少しこうしたほうがよいですよ」というコンサルティング的なことから入っていき、その後、開発、保守運用へサービスが続きます。その過程によって、我々はお客さまのサービスを一番詳しく理解するベンダーとなるわけです。

深い理解がある我々から別の開発会社に変えるとなると、もう一度同じことをわざわざ繰り返すことになります。

坂本:細かいことが伝わっていないため、やり取りが必要になりますね。

永山:「ツーカーの仲」になるところからやり直しになるわけです。お客さまのサービスが順調に成長され「こんな新しいことを追加したい」という時に、一番理解している相手先となり、ひいては「次回もリピートしよう」となってもらえることが、我々の一番の強みです。

言われたものだけ作っているのであれば、おそらく別のベンダーでもよいと思います。サービス立ち上げに最初から入っているということが我々の強みになっています。

坂本:今までいろいろな案件をこなされてきてノウハウの蓄積があると思います。過去の事例をそのまま流用するということではなく、そのノウハウを活用した提案ができるということも強みでしょうか?

永山:そうですね。すでにノウハウがあるぶん、時間も工数もあまりかけないですし、貯まったノウハウを別のお客さまに向けて活用することもできます。

事業内容・Webソリューション事業②

永山:今のご説明でだいたい何を行っているかというイメージがついたと思います。本日は個人投資家の方が多いと思いますので、当社がどの立ち位置にいるのかということもご説明します。

現在は「DX、DX」と呪文のように叫ばれており、「DX化のためになんでもやる」という国の姿勢が、業界内で理解された段階だと思います。業界の立ち位置としては、DXとおおまかに言っても、環境の整備から、実際にデジタルトランスフォーメーションを使った実践まで全部を行い、初めてDXと言えると考えています。

坂本:複合的に統合することが本来の意味ということですね。

永山:はい。世の中には「なんでもデジタル化したらDX」という風潮もありますが、それには違和感があります。

坂本:私も違和感がありますが、それを声高に「違和感」とは言えなくなりました。「ITを進化させるイコールDX化」などという使われ方になってしまいましたね。

永山:ニッチ過ぎても世の中に浸透しないため、それはそれでよいとも思いますが、少し違和感はあります。

坂本:本来の考え方と比較すると、少しおかしいですよね。

永山:おっしゃるとおりだと思います。スライドにお示ししているのは、社名は出していませんがデザインを専門とする上場企業A社です。UI・UXに特化してデザインの力でサービスを変革させるというところがある企業です。また、データ活用専門の上場企業B社では、マーケティングで蓄積したデータを用いたソリューション提供を行っています。

最近はAWSというクラウドサーバーを使うところが多いですが、みなさまご存知のような大きい企業でも、データセンターを使い、物理サーバーをいくつも置くようなことをまだ行っているケースが意外と見られます。クラウド専門の一部上場企業であるC社では、そのようなサーバーの乗り換えにおいて、AWSに特化し対応しています。

我々はAWSの構築も行っていますし、コンサルティングに加えマーケティングも実施します。当然、UI・UXデザインも含めて開発を行っています。環境整備から実践まですべて行っているとお伝えしたのはそのような意味です。

坂本:複合的に統合するため、いくつもの課題を解決しなければいけない中で、御社はそれらのうちの単体ではなく、すべてに対応できることをスライドの図で示したということですね。

永山:おっしゃるとおりです。

事業内容・Webソリューション事業③

永山:先ほども少し触れましたが、Webソリューション事業の特徴の1つとして、昨年の売上高における顧客継続率が8割程度となっています。1度お付き合いいただくと次回も発注がいただけるということで、継続率としてはかなり高いです。ロイヤリティループが発生しており、売上高の構築に関してはよいループができています。

なぜかという理由は先ほどご説明したとおりです。タッチポイントとして一番最初からお客さまのサービスに関わり理解しているため、また発注をいただけるという好循環ができているためです。

坂本:1つおうかがいします。ロイヤリティループ発生の理由は先ほどお伝えいただいたのですが、新規、継続を含めてどのようなスペックのお客さまが多いのでしょうか? また、新規顧客も少なくとも20パーセント以上いらっしゃると思うのですが、リーチ方法を教えていただけたらと思います。

永山:新規顧客へのリーチについては、今のDX化の波に加え、コロナ禍の影響が大きいです。この2年間くらいで、リアルのビジネスをやられているお客さま、例えば百貨店やアパレル系販売店が、リアル店舗だけでは事業が成り立たない、しかしデジタル化してECサイトで本業を補おうとした時にノウハウがないということで、そのようなお客さまからの引き合いが非常に多いです。

そのため、信じられないかも知れませんが、実は営業を行っていません。20年近く事業運営する中で、以前からデジタル化の傾向はありましたが、やはりそれが加速したことにより、自分たちで案件を取りに行くことがありません。今年上場したこともあるのでしょうが、とにかくインバウンドでお客さまから引き合いがあります。

お客さまの属性としては、本当にいろいろな業種があります。先ほどお伝えしたように、百貨店やアパレルの他、人材系メディアを運営する会社など多岐にわたります。どこかに特化しているということは、業界の括りとしてもないですね。

坂本:特別に強い業界があまりなく、御社ではどのような属性でもだいたい対応しているということですね。

永山:そうですね。「この業界に強いです」というベンダーもいますが、当社の過去20年のノウハウの蓄積が実はここで効いており、どのようなお客さまから引き合いがきても対応できています。

私としては、特化しているのはよいところでもあると思いますが、逆に依存し過ぎてしまうこともあるため、顧客の属性も業界もばらけているというのは非常に大きな強みだと思っています。

事業内容・Webソリューション事業④

永山:一気通貫でコンサルティングから開発まで行う過程で、実はSaaSのプロダクトも運営しています。何のためのプロダクトかと言いますと、例えばサイト内検索やキャンペーンコンテンツ生成機能、プッシュ通知などです。すべて1から開発するとなると、当然コストも時間もかかってしまいますが、このSaaSプロダクトを用いて組み合わせることでコストも工数も削減できます。

結果として、お客さまにとってはそこまでお金をかけず満足するものができるという利点があります。また、AWSについては先ほどお伝えしましたが、古いサーバーから乗り換えることもできるため、DX化していく中での細かい武器を持っています。

単体でのお問い合わせもあります。「もともとECサイトを持っているが運用がうまくいかない」「UI・UXを見直してほしい」というご要望があります。

サイト内検索も、かなり肝だと考えています。「検索してもよいものが出てこない」ということがありますよね。

坂本:そうですね、使いづらいと嫌な気持ちになります。

永山:そうなると「使うのやめた」とユーザーが離れてしまいます。実は、この課題について単体でも引き合いが一定数あります。我々はそれだけに対応するのではなく、それをタッチポイントとして「では、すべて直しませんか?」という方向に広げていく武器としても使っています。

事業内容・Webソリューション 22期トピックス①

永山:今期のトピックスです。先ほどからご説明してきた内容で、実際の事例をご紹介します。東急百貨店では、コロナ禍でリアル店舗にお客さまが来ないが、営業はしなくてはいけないということでした。EC通販事業はもともと持っていましたが、今までと同じトーンで運営していても売上は上がらないものです。

そこで、デザイン制作やマーケティングに関する共同チームを作り、我々が伴走することにしました。お客さまから我々に全部お任せしてもらえることも嬉しいですが、一番よいのは、お客さまが我々と一緒に施策を進めていくことです。社内にノウハウが貯まりますし、サービスをさらに一段上に成長させるためにも、大事なことだと考えています。

こちらは、我々とチームを作って社内にノウハウを蓄積していただいたという典型的な事例です。

事業内容・Webソリューション 22期トピックス②

永山:他にも3つの事例があります。ニッコーでは、管理業務におけるDX化を目的に電子文書の開示システムを作りました。紙で発注している企業は、まだまだ多いです。そこそこの会社規模であったり、規模が大きくなり過ぎたりという場合、デジタル化は簡単に進められません。そのようなお客さまからの引き合いで、クラウド環境下で文書のデジタル化をお手伝いしました。

業種は変わりますが、カラーズではリアル店舗でペットフードのサポートサービスを行っています。リアルだとお客さまが来なくなってしまったので、EC化を実施しました。スライド下段のI-Styleはエンタメ系の事例です。

坂本:このようなソリューションにも対応できるのですね。

永山:こちらもコロナ禍でライブが実施できないため、リアルライブの音源を高音質でオンデマンドで配信できるようなEC化のお手伝いを行いました。昨今の時流でこのような課題が示され、コロナ禍だからこそ困っているお客さまのお手伝いをしているという事例です。

事業内容・オンラインゲーム事業①

永山:スライド14ページはオンラインゲーム事業についてです。投資家のみなさまは、やはりオンラインゲームが少し嫌いなところがあります。

坂本:ボラティリティが激しいなどの理由があるようですね。

永山:そうですね。ゲームをする分には楽しんでいただけますが、株式投資としては少しボラティリティが大きく嫌われてしまいます。丁寧にご説明しますと、自社ゲーム開発とパートナーゲーム開発、クリエイター人材派遣という、セグメントの中に主な事業が3つあります。

自社ゲームは、まさに自分たちで企画、開発して運営する、言わば自分たちで作り上げて世に配信しているゲームです。パートナーゲーム開発は、アカツキなど上場企業の大手ゲーム会社から依頼される受託開発で、そのような会社と一緒に作るゲームです。他にも、他社で作って配信していたゲームの運営を我々が引き受け、その後も継続するという運営移管も行っています。

クリエイターの派遣については、先ほどの冒頭の話に重なりますが、ゲーム会社としては全員正社員のメンバーで進めたいもののボラティリティが大きく、開発プロジェクトの単位もいつも安定しているわけではないため、緩急が出てしまうという課題があります。しかし、人材がすぐにほしいと言っても簡単には見つかりません。これは我々の悩みでもありました。

そこで、我々の空き稼働が出ているところでクリエイターをゲーム会社に派遣することにしました。我々としては空き稼働がなくなり他社でノウハウも勉強できる、お客さまとしては欲しかった人材が有期雇用で賄えるというメリットがあります。

大枠で3つの事業についてお話ししました。売上の内訳がどのくらいかは、のちほど数字を開示するところでご説明します。

事業内容・オンラインゲーム事業②

永山:事業の横展開についてご説明します。ボラティリティが大きいと言われていますが、自社ゲームの売上収益に頼らず、3つの事業がうまく循環しています。

坂本:自社ゲーム開発と運営移管、他社との開発、人材派遣とありますが、中心はどこになるのでしょうか? 自社ゲーム開発が中心であれば、毎年のリリース頻度が決まっていると思います。御社の方針をお話しいただけると、さらにゲーム事業についてみなさまの理解が深まると思いますが、いかがでしょうか?

永山:ゲーム事業を始めた時は自社ゲーム開発が中心で、自社ゲームを作る間に緩急ができた時に、他のパートナーゲーム開発も行うというスタンスでした。しかし、最近はボラティリティが大きいと、上場する時に審査が通らないのです。

坂本:「ウケが悪い」というか、株主にとっても悩ましいというパターンですよね。

永山:そうですね。そのため、軸足としては徐々に自社ゲームからパートナーゲーム開発へ移りました。Webソリューション事業と同様に、発注いただいて収益がある程度把握できるため、こちらに売上の比率が移っていきました。

また、プロジェクトの緩急がどうしても発生してしまうため、後発でクリエイターの人材派遣を始めました。現在の比率としては、運営移管も含めたパートナーゲーム開発が6割近くを占めており、そこにクリエイター派遣と自社ゲームの割合が加わるかたちです。この言い方は少し語弊を招きそうですが、自社ゲームが当たろうが当たるまいが、業績にそこまでインパクトはありません。

坂本:要は自社ゲームだけでは難しく、他の事業によって最低の収益を確保するためのネットを張っているということですね。

永山:はい、おっしゃるとおりです。

坂本:自社ゲームで超スーパーヒットが出ると、時価総額1,000億円に乗ってしまうこともありますから、夢がありますよね。

永山:ありますね。投資家の目線として、「ちょっと読み辛いよね」という方もいます。ただ、受託開発だけを行っても成長はしていきますが、みなさまが期待されている急成長する場所はどこなのかというと、自社ゲームだということです。

坂本:「自分で作りたい」というクリエイターのプライドや、作る楽しみもありますよね。

永山:そうですね。間接的なところで、エンジニアを国内で採用していく時に、自社のプロダクトを持っているというのは実は1つの強みになっています。

坂本:自社プロダクトがあるというだけでも、影響は相当ありそうですね。

永山:はい。他社のものを作るよりも、自分たちでクリエイトしたものを世に発信したいという欲求がエンジニアの方にはけっこうあるため、間接的に寄与しているところが非常に大きいです。また、自社ゲームを企画、開発し運営しているからこそのノウハウがあるため、クリエイター派遣として他社のゲームを作る時にもすんなり進められるということもあります。

坂本:勘どころがわかるということですね。

永山:おっしゃるとおりです。

事業内容・オンラインゲーム事業 22期トピックス

永山:22期のトピックスです。開発のパイプラインに関してはこちらでご説明しています。自社ゲーム開発が1つ、パートナーゲーム開発が2つ進行しています。

運営については、自社ゲームが3つ、パートナーゲームが3つです。スライド16ページにあるとおり、マーベラスやアカツキ発のパートナーゲームは共同で開発や運営を行っています。また、他社パブリッシュのため開示不可ですが、運営に携わっているパートナーゲームもあります。

運営移管のプロジェクトは、他社から譲り受けて我々の社名で出しているものが1つあります。第1四半期にも発表しましたが、セガから『けものフレンズ3』を7月末で完全に移行しました。ご覧のとおり、プロジェクトが何本も走っています。

2022年1月期第2四半期累計・業績ハイライト

永山:業績ハイライトです。大変ざっくりお伝えしますが、売上高は両事業ともに昨対比、予算比で好調でした。予算比109.1パーセントで、110パーセントになると開示義務が生じ、上方修正が必要になるラインですが、それにかなり近い比率です。昨対比も116.3パーセントと非常に上回っています。

しかし、利益面では予算比、昨対比ともに大きく下回ってしまいました。後ほどセグメントごとにご説明しますが、結局のところ、外注費が大きくかかってしまったことが原因です。成長の源泉となる売上増大を目的に、先行投資としてとにかくお客さまや案件を獲得することを優先したことが大きく影響しています。

また、想定以上に『けものフレンズ3』の移管費用がかかってしまいました。

坂本:その影響は大きいと思います。

永山:そちらの読みが少し甘く、株主さまには大変申し訳なかったのですが、売上の成長は最低限担保できる決算となりました。

坂本:『けものフレンズ3』の移管費用は一時的であると考えてよろしいでしょうか?

永山:もちろんです。5月、6月、7月と移管期間が3ヶ月ありましたが、その間、もともとの運営元であるセガからの移管費用は当然我々に発生していますし、移管時のコストも我々が持っていたため、我々だけではコントロールできない費用がありました。移管期間後の8月からは我々のみの単体になります。

2022年1月期第2四半期・業績ハイライト Webソリューション事業(売上)

永山:Webソリューション事業の売上は、順調に伸びています。これは先ほど冒頭の事業説明の中でお伝えしたとおりです。

坂本:冒頭では「案件もけっこういろいろなところから来ており、得意な部分の業種に固定されることなく、まんべんなく対応が可能である」というご説明でした。

永山:おっしゃるとおりです。そのため、売上前年同半期比では116.4パーセント増となり、売上前年同四半期比、つまり第2四半期のみに限った場合でも113.5パーセント増と、受注を大きく進めることができました。

2022年1月期第2四半期・業績ハイライト Webソリューション事業(原価)

永山:スライドの棒グラフは原価の内訳を示しています。「利益は出ていないのではないか」というところについてご説明しますと、前年上期は5億6,400万円でしたが、そこからだいたい1億7,000万円ほど増えています。受注がすごく活況な状況だったため、外注費が増えています。

利益をコントロールするために受注しないという選択肢もありました。ただ、我々はロイヤリティループが発生しやすい事業を行っているため、「この活況な波が来ている時にあえて捨てることはないだろう」という判断となり、外注を使って利益を取りにいきました。

坂本:利益が取れる範囲内で外注するということでしょうか?

永山:おっしゃるとおりです。もちろん、赤字案件はそうそうありません。

坂本:確かに最近は赤字案件についてあまり聞く機会がないです。

永山:昔のようなことはない状況です。

坂本:やはり外注市場はけっこう厳しいのでしょうか?

永山:おっしゃるとおりです。そのため、外注を使って受注を取りにいきました。

2022年1月期第2四半期・業績ハイライト オンラインゲーム事業(売上)

永山:オンラインゲーム事業も売上は順調に伸びています。昨年度の上期で10億2,200万円、今期は11億8,700万円となり、前年同半期比で116.1パーセント増となりました。詳しい内訳はスライドの棒グラフに示しています。

スライド右端の2022年1月期第2四半期のグラフをご覧ください。一番下の濃い青色部分で示している「パートナーゲーム開発」の5億3,000万円は、『けものフレンズ3』の運営主体の移管も含んでいるため、昨年と比べても170.1パーセント増と伸びています。

これは当初目論んだとおりになっています。「なぜあのような大型ゲームを移管したのか」というと、我々が売上と運営ノウハウを吸収できるためです。「クリエイター派遣」「パートナーゲーム開発」「運営移管」といった、いわゆる事業を安定させるために外せないところはきちんと伸ばすことができました。

どちらかというと自社ゲームは想定を下回ってしまったため、売上は上がっていない状況です。しかし、予実の観点で言いますと、当然投資家のみなさまにご迷惑はかけられないため、予算は保守的に組んでおり、予算比ではそれほど影響はありません。

坂本:『けものフレンズ3』を移管したとのことで、次の第3四半期からは、自社ゲームに乗るかたちでしょうか? これはずっとこのままでしょうか?

永山:このままのかたちになります。

坂本:ありがとうございます。そのように見ていきたいと思います。

2022年1月期第2四半期・業績ハイライト オンラインゲーム事業(原価)

永山:オンラインゲーム事業の原価です。昨年上期は原価が7億5,300万円でしたが、2022年1月期には10億円を超えました。なぜこのようになったのかと言いますと、『けものフレンズ3』の運営移管の原価が想定以上にかかってしまったためです。ここは本当に真摯に反省しなくてはいけないところになります。

我々にとっては初めての大型案件でした。小規模、中規模を行った上で、次のステップとして大きいところに取り組みましたが、相手もいる中で、我々だけではなかなかコントロールしきれない部分があり、原価を読み誤ってしまいました。

坂本:コミュニケーションは取れていたのではと思いますが、工数が多かったのでしょうか?

永山:コミュニケーション面では問題ありませんでした。人気ゲームのためユーザーがかなりついており、コミュニケーションがないと嫌われてしまいますので、そこは最新の注意を払いつつ実施しています。やはり、移管期間中はセガで使った外注費なども我々が担っていますが、さすがに他社であるセガに「人件費を下げてください」とは言えません。

「コントロール下におけない」「原価を読みづらかった」という部分が問題となり、正直にお伝えすると、このあたりは株主さまからお叱りをきちんと受けています。「売上を伸ばしているのなら、利益をきちんと上げてほしい」というお叱りも受けているため、下期以降と来期にて考えています。

坂本:今後に期待したいと思います。

2022年1月期第2四半期累計・貸借対照表

永山:B/Sについては、それほど大きな動きはない状況です。変化としては『けものフレンズ3』を移管する時に支払いが発生したため、流動資産が少し動いているくらいです。

20年という過去からの積み上げにより、自己資本比率などは安定的であるため、「利益が上がらなかったために財務体質が急に悪くなる」ということはまったくなく、安心できると思います。

2022年1月期第2四半期・社員数推移

永山:社員数推移です。第1四半期は、4月に新卒が30名入ってきます。昨年と比較すると若干微増となり、エンジニアの採用も順調に進んでいます。

2022年1月期第2四半期累計期間・業績予想修正

永山:業績予想の修正を発表しました。スライド25ページの表をご覧ください。売上が大きく跳ねており、予算より1億8,400万円ほど上振れましたが、利益ベースは下がってしまった状況です。理由は先ほどお伝えしたとおりです。

当期純利益については、今回新作ゲームがそれほど売れなかったため、苦渋の決断となりましたが、長引かせずに減損としました。もちろん、まだ運営やサービス自体は運営していますが、会計上、今のうちにこの負担を一旦落とすという判断になりました。そのため、上期で悪い部分を出し切ったと理解いただければと思います。

2022年1月期・全社通期業績予想修正

永山:全社通期業績予想も修正しました。売上高は若干上振れとなり、予算より5,800万円上振れました。利益に関してはかなり下回ります。これは、先ほどお伝えしたとおり、「一時的に外注費がかかってしまったため、これから低減する」という時に、どうしてもあっという間に低減させることはできないため、第3四半期は若干低減するために時間を要し、第4四半期から正常に戻るということになります。

上期のマイナスなどに関しては、第3四半期で見積もっていたものを吸収するまでに少し進まなければならない状況です。当然、今後みなさまの期待を外すわけにはいかないため、保守的に作りつつ、このような背景があるということです。

今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業①

永山:業績発表により期待を裏切ってしまったため、「それでは今後何をするのか」という一番大事な内容についてご説明します。

Webソリューションは、引き続き、今行っていることを愚直に繰り返すかたちになります。もともと持っていた「顧客の継続率が高い」「いろいろなサービスを持っている」という特徴を活かした上でタッチポイントを増やし、案件をとにかく取っていきます。上期で売上が伸びているため、これは現在も達成できている内容です。

また、戦略としては単価のアップを狙っていきます。売上が伸びているため、当然収益にも反映させたいと考えており、単価アップを狙いながら愚直に実施を継続します。市場環境は非常によいため、これをしっかりと実施すれば大丈夫だと思っています。

今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業②

永山:「それではうまくいっているのか」という話になりますが、スライド29ページ右下の棒グラフで、問い合わせ数の推移を示しています。世の中においても、明らかにDX化の波が来ています。先ほど「我々はインバウンドで営業はしていません」とお伝えしましたが、グラフで見てわかるように、サービスに関する問い合わせがしっかりと伸びてきています。

今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業③

永山:単価についてです。「単価推移はどうなっているのか」と言いますと、しっかりと伸びています。背景としては、お客さまからDXに関する要望があり、予算を割くようになっていただけたということと、きちんと伴走することにより、多少単価を上げていただけています。

受注のために外注を使うことで一時的に利益が落ち込んでしまったのですが、単価アップは順調に進んでいるため、コントロールしながら引き続き継続することで、Webソリューションは問題ないと思っています。

オンラインゲーム事業においてさらなる事業拡大を見据えてM&Aを実施

永山:オンラインゲーム事業です。基本合意をしただけのため、最終的にフィックスしているわけではないのですが、今はM&Aの話をムーンラビットと進めています。どちらかというと、こちらに関しては運営しているゲームの売上が欲しいということではなく、今後、海外展開を考えた時に人材が欲しいという理由で話を進めています。

ゲームに関して中国で規制が入りましたが、他にも台湾や韓国などに市場があることや、やはり母集団が違います。

坂本:海外では人口がまったく違うと思います。

永山:おっしゃるとおりです。そこをどうにか広げていくためのノウハウが社内にはなかったため、M&Aを通して、そのような人材とノウハウを得る目的で進めています。

坂本:海外ゲームについておうかがいします。ライセンスの輸入や輸出も御社が行うという方法もあると思いますが、そうするとローカライズがものすごく面倒ではないかと思います。その場合、コストと手間がけっこうかかってしまうのでしょうか? 収益の振れが出てくると思うのですが、そのあたりのイメージを教えていただければと思います。

永山:出す地域や作品、またローカライズもどこまでするのかでまったく変わります。例えば『けものフレンズ3』は、ユーザーがかなりついています。最近では「クールジャパン」もやや古い印象ですが、「そのままで販売してほしい」というニーズがある場合はそれほどローカライズも行わないことになります。

当然、ご心配されるようにコストを過剰にかけすぎて利益が出ないとなると本末転倒であるため、そのあたりは匙加減を考えながら進めていきます。

今後の成長戦略に関するトピックス・オンラインゲーム事業①

永山:『けものフレンズ3』の運営移管が終わると、8月からは我々だけで本格的に運営していきます。もちろん制作委員会はいるのですが、先ほどお伝えしたとおり、適切なコストコントロールを行っていきます。売上にはきちんと寄与しているため、しっかりと売上が担保されつつも、コストコントロールを行うことで利益貢献をどんどん上げていくことに注力します。

今後の成長戦略に関するトピックス・オンラインゲーム事業②

永山:スライド33ページに示しているのは新作ゲームになります。サービス開始が来年度になるため、今年度の業績には含まれませんが、我々が以前リリースし10周年を迎えた「式姫Project」というゲームを再度、完全新作としてリリースします。

ユーザー数がすごいのかと言われればそれほどではありませんが、シリーズ総計では120万ユーザーにまで上りました。セールスランキングで1位や2位でないと成り立たないと思われがちなのですが、そのようなことはありません。

坂上:「ゼロからのスタートではなく、もともとユーザーがいるほうが当然よい」ということですよね。

永山:おっしゃるとおりです。我々としてはライトユーザーを狙いに行くというより、我々の世界観を好きだと言ってくれているニッチなユーザー向けに展開していく方針です。「セールスランキングで上位にいない」場合にも、実は事業として成り立っているという点は少し知っておいてほしいと思います。

坂本:セールスランキングでずっと上位にいると、最低でも時価総額1,000億円は上がるだろうという話になってくると思います。

永山:おっしゃるとおりで、その点についてはご心配のないようご説明しました。

今後の成長戦略に関するトピックス・事業成長イメージ

永山:本当は中計で発表したいところですが、受託の関係で数字が読みづらい面もあります。現時点では数字をインクルードして発表していませんが、全体のイメージをお話しします。

スライド下に青色部分で示しているのがWebソリューション事業で、先ほどお伝えしたとおり、市場が活況できちんと売上も伸びており、安定的な状況です。目論見書などを見るとわかると思いますが、過去5、6年以上、売上はずっと成長してきています。実績も出ており、市場環境もよいため、安定的に伸ばせると思っています。

その上に濃いオレンジ色で示している「パートナーゲーム開発」「運営移管」「クリエイター派遣」も順調に伸ばしています。普通に実施すれば順調に110パーセント、120パーセントの成長は担保できると思います。

ただ、やはりこれだけでは投資目線で言いますと「跳ねない」「キャップがある」という話になってしまいますが、先ほどお伝えした、海外展開を見据えたM&Aがあります。上場を機にしっかりとした財務力はあるため、M&Aを実施し、さらなる規模の拡大を図ります。

スライド上部に点線で示しているように、単なる規模の拡大ではなく、挑戦による成長へ寄与していくイメージで進めます。そのために優秀なエンジニアを確保し、我々が持っていない属性のお客さまを一緒にインクルードさせていきます。

個人投資家のみなさまなどは、特に決算では「安定しているのはわかったが、おもしろくない」といった声もあります。

飯村美樹(以下、飯村):厳しい声ですね。

坂本:厳しいですが、私は好きです。

永山:私も努めているとはいえ期待を外すことはできないため、そこを堅実に担保しつつ、成長ドライバーとしてM&Aを使って海外展開などに挑戦していきます。

今後の成長戦略に関するトピックス①

永山:今回、資本政策において3分割の株式分割を実施します。「なぜ実施したのか」「なぜこのタイミングなのか」について少し気になると思いますが、我々はもともと上場した時、売出や公募などが少ないため、本当に流動性が低い状況でした。

上場時はどの会社も同様だと思いますが、上場すると出来高が上がり株価もよいため、だんだんとなだらかな右肩下がりの曲線を描くと思います。下がる時は、流動性が低いため、出来高が醸成できない状況になります。

そのため、少し売られるとすぐに下がり、少し買われるとすぐに上がる、という本来の正しい値動きではなくなっていました。「それなら公募をもっと増やしてほしい」という話になると思いますが、きちんと流動性を高めるために分割して、投資単位あたりの金額を下げたいと思います。

今の時価総額として、やはり個人投資家のみなさまが入りやすい金額にしないとよくないということで、まず投資単位を下げるために流動性を確保し、いろいろな方に知っていただき、また、投資しやすい環境を整備するために実施することになりました。9月30日が基準日のため、10月1日から分割されます。

今後の成長戦略に関するトピックス②

永山:ESGの取り組みです。これは今後、時価総額が100億円、500億円となり、海外の機関投資家が入ってきた場合に必ずスクリーニングが入るため、今のうちから進めたいと思っています。できることはきちんと実施し、実施している内容を開示しています。

どうしても投資家目線になってしまいますが、環境に配慮し、従業員の働き方をきちんと担保するために、また、我々がしっかりと成長して企業を運営していくためには、実施しないといけないことになります。どちらかといえば、結局すべてのステークホルダーにとってのプラスになるという理由で、着手しました。

質疑応答:運営移管による効果について

飯村:今回大きなトピックスである『けものフレンズ3』について、「運営移管の効果により、他の案件につながることはあるのでしょうか?」というご質問をいただいています。

永山:先ほどパイプラインについてお伝えしたとおり、現在手掛けている案件がたくさんあります。これをきちんと運営することによって、他のゲーム会社で「しっかりと運営できている」と話題になると、当然また引き合いが来ることになります。

坂本:信用面で影響してくるということですね。

永山:もともとアニメだったこともあり、やはりコアなユーザーがついています。私もIR用のTwitterアカウントを使っているのですが、「今回『けものフレンズ3』で新しくこのようなことをします」とツイートしたところ、ものすごい反響があります。また、「ずっと運営してほしいため、株を買いました」という声もありました。

飯村:熱い反響です。

永山:本当にうれしい限りです。逆にいいますと、「期待されている中、今回少し業績を下方修正してしまったため、読みを外してはいけない」と本当に感じました。

飯村:『けものフレンズ3』によって、応援する人がだいぶ増えた印象です。

永山:おっしゃるとおりです。IR用Twitterのフォロワーはおそらく、けっこうな人数が『けものフレンズ3』を応援してくれている方だと思います。

質疑応答:分割および出来高に関する今後の展開について

坂本:出来高についておうかがいします。おそらく新区分のスタンダードの選択に関する話があったと思いますが、今後の展開として、「流動性」といっても、実際は違う意味の流動性であると思います。そのあたりも含めて分割などを考えられたのか、今後の展開を含めて教えていただければと思います。

永山:今、市場はスタンダードですので、形式的ではありますが、プライム市場を目指していくことが我々が目標とするステップになります。先ほどお伝えしたとおり、まだまだ時価総額が小さいため、「阻害要因を外し、投資しやすくする」「流動性を高める」「気になった時や気に入っていただけた時に、投資がしやすい環境を整備する」ために分割を実施しました。

出来高をどうしても醸成しないといけないため、今後きちんとIRニュースをリリースし、今期発表した予算をきちんと進めたいと思います。株価とはいえ、上げるためには機関投資家にもリーチしないといけないため、私の立場としては、IRで機関投資家の方に買っていただけるように丁寧に説明していきたいと思っています。

質疑応答:競合と認識している企業について

飯村:「競合と認識している企業について競合優位性を含めて教えていただけるとありがたいです」というご質問です。

坂本:ゲームとWebソリューションの両面があると思います。

永山:Webソリューションでいいますと、先ほどお伝えしたとおり、全部「何でも屋」として行っているため、その観点での競合という意味では、去年上場したSun Asteriskという会社です。我々と似たように全部のサービスを実施しています。

ただ1つ違うのは、Sun Asteriskはベトナムに1,000人以上のエンジニアを抱えており、オフショアで実施しているため、時価総額に差があります。我々と同じ観点としては、マーケティングやコンサルティングも実施しており、お客さまのサービス開発に寄り添いながらリリースしている企業になります。

先ほどスライド9ページで示したとおり、A社、B社、C社はそれぞれ特化して行っているため、ある意味その分野に関しては競合となります。我々は「AWS」を構築できるため、一部上場されているサーバーワークスはある意味、競合になります。ただ、我々も「AWS」のみで事業を行おうとしているわけではないため、「一部が被っている」という認識になります。

投資家からすると「競合はどこなのか」が非常に大事になると思います。これに対してはっきりいいますと、市場規模が広いため、我々が獲得しているシェアに関しては問題ありません。まだ心配せずに見ていただければと思います。

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