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アングル:米国で全成人にブースター接種へ、専門家のアドバイスは
米疾病対策センター(CDC)は11月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのブースター接種対象を、国内の18歳以上の全ての成人に拡大することを決めた。急拡大するデルタ変異株へのワクチンによる耐性を維持したいとの狙いだ。写真はファイザー/ビオンテック製のワクチン接種を受ける女性、ペンシルベニア州で8月撮影(2021年 ロイター/Hannah Beier)
[シカゴ 20日 ロイター] - 米疾病対策センター(CDC)は11月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのブースター接種対象を、国内の18歳以上の全ての成人に拡大することを決めた。急拡大するデルタ変異株へのワクチンによる耐性を維持したいとの狙いだ。
これまでCDCがブースター接種を推奨してきたのは65歳以上の高齢者かCOVID-19に対するリスクが高い人だけで、最初に接種を受けたものと違うワクチンを選ぶこともできるとしてきた。
これからは、新たに数百万人の米国民が、ブースター接種でどのワクチンを選ぶかという問題に直面することになる。何人かの専門家のアドバイスを聞いてみよう。
<最新のガイドラインは>
CDCの従来の指針では、ブースター接種は特定の年齢もしくは健康その他のリスク要件に該当することが条件とされており、自分にその資格があるのかどうか、混乱する人も見られた。
新たな指針はそこを明確にするものだ。ファイザー/ビオンテック製、あるいはモデルナ製の2回目のワクチン接種を受けてから最短で6カ月以上経過した人は、18歳以上であれば誰でもブースター接種を受けることができる。
CDCの諮問委員らは、50歳以上の成人にはブースター接種を推奨している。以前の指針では65歳以上の人全員が推奨対象だった。
以前の指針のもとでは、18-64歳の人々の多くが、自分にブースター接種の資格があるのか頭を悩ませていた。この年代に関しては、肥満や糖尿病など重症化リスクを高める健康状態にある人にブースター接種を認めていたからだ。
1回接種用のジョンソン&ジョンソン(J&J)製ワクチンの接種を済ませた成人については、今回の指針でも変更はない。2カ月後に、承認済みのCOVID-19ワクチンのいずれかでブースター接種を受けるべきだとされている。
<ブースター接種はどのワクチンにすべきか>
ブースター接種に関する米国の指針では、「ミックス・アンド・マッチ」を認めている。つまり、最初に接種を受けたワクチンと同じワクチンを使うか、別の種類のワクチンを使うかを選択できる。
悩ましい選択のように思えるが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家モニカ・ガンディー博士はこのような、シンプルな説明をしている。
「基本的に、どのワクチンでも好きなものを選べばいい。ただ1つだけはっきりしているのは、J&Jのワクチンを受けている場合はmRNAワクチン(ファイザー製またはモデルナ製)にするべきだ、以上」
米食品医薬品局(FDA)はJ&J製ワクチンについて、COVID-19に対する有効性が1回接種の72%に比べて2回目では94%に上昇するというデータに基づき、2回目の接種を受けることも問題なしとしている。
だが、別種のワクチンによるブースター接種に関する連邦政府の研究では、J&J製ワクチンの接種の後でmRNAワクチンのブースター接種を受けると、抗体価が大きく上昇することが分かっている。
「ミックス・アンド・マッチ」という方針のおかげで、医師としては、ある種の副反応リスクが高い患者に対して、別のワクチンを試してみるよう勧める余地が生まれている。一方で、すべての薬局や医院が、ブースター接種用ワクチンを全3種類揃えなくて良いことにもなる。
<ファイザーか、モデルナか>
mRNAワクチンの接種を受けた人のうちブースター接種の必要性が最も高いのは、ファイザー/ビオンテック製の接種を受けた高齢者であるとするエビデンス(証拠)がある――こう指摘するのは、ペンシルベニア大学の感染症専門家でFDAのワクチン諮問委員会の一員でもあるポール・オフィット博士だ。
当初mRNAワクチンの接種を受けた人の中でも、もっと若い層については判断が分かれる。19日にCDCワクチン諮問委員会が提示したデータからは、ファイザー/ビオンテック製ワクチンによる防御効果はモデルナ製よりも早く低下するようにみえるが、どちらのワクチンも重症化・死亡を防ぐ効果は依然として高い。
ファイザー製ワクチンでは1回に投与されるのは30マイクログラムで、ブースター接種でも同じ。モデルナ製の場合、最初は1回100マイクログラムだったが、ブースター接種では半分の量で承認されている。モデルナの低用量ワクチンのブースター接種で最初の接種と同じように効果が続くかどうかは未知数だ。
バンダービルト大学医療センターのワクチン研究者キャスリン・エドワーズ氏は、モデルナ製の低用量ワクチンでは、投与量の多いモデルナ製ワクチンで見られた発熱や疼痛(とうつう)といった短期的な副反応が抑制される可能性があると話す。
モデルナ製、ファイザー製のワクチンでは、若年男性に心筋炎と呼ばれる心臓の炎症という副反応が生じることがある。ただし、19日にCDCの諮問委員会に提示されたデータでは、ブースター接種によってそのリスクが上昇する傾向はみられなかった。
(翻訳:エァクレーレン)