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NY市場サマリー(26日)米株急落、日本円・スイスフラン上昇

2021年11月27日(土)07時22分

[26日 ロイター] - <為替> 日本円とスイスフランが上昇した。現在の新型コロナウイルスワクチンに耐性を持つ可能性のある新たな変異株が検出されたことを受け、安全通貨に資金が流入した。一方、ドルは利益確定売りに押された。

26日のニューヨーク外為市場は感謝祭の祝日明けで商いが乏しく、不安定な値動きだった。

米・カナダ政府は26日、南アフリカで新型コロナウイルスの新変異株が検出されたことを受け、アフリカ南部からの渡航者の入国を制限する方針を発表した。米国の入国制限は米東部時間29日午前0時01分から発効となる。

また、世界保健機関(WHO)は26日、南アフリカで検出された新型コロナウイルスの新たな変異株「B.1.1.529」を「懸念される変異ウイルス(VOC)」に指定したと発表した。

CIBCキャピタル・マーケッツの北米外為戦略部門責任者、ビパン・ライ氏は、新たな変異株は従来のウイルスとは異なるスパイクタンパク質を持つため、大半の市場関係者はパンデミック(世界的大流行)の新局面が到来するとの懸念を強めたと指摘。「新たなロックダウン(都市封鎖)や制限措置が導入されるかもしれないし、新たなワクチンも必要になるだろう」と述べた。

円は対ドルで約2%上昇し113.09円と2020年3月以来の高値。

ユーロは対ドルで0.97%高の1.1312ドル。ただ、対スイスフランでは1.0428フランと6年超ぶりの安値を付けた。

ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、ケネス・ブロー氏は「新たな変異株を受けて円やスイスフランに資金が流入する教科書通りの質への逃避となった。流動性の低さも要因となった」と述べた。

ドル指数は0.75%安の96.030。CIBCのライ氏は26日のドル安について、直近の上昇を受けて利益確定売りが出たことが背景で、ドルの安全通貨としての位置づけに変化があったわけではないと言及。「長期的なポジションの解消に伴う短期的な動きだが、(ポジションの)バランスがもう少し改善すればリスクオフ下でドルは引き続きアウトパフォームするだろう」と述べた。

ポンドは一時1.3278ドルを下回り年初来安値を更新した。12月の英利上げの可能性が後退した。

暗号資産(仮想通貨)では、ビットコインが一時5万3524ドルと10月10日以来の安値。イーサは3917ドルと10月28日以来の安値を付けた。

NY外為市場:[USD/J]

<債券> 国債利回りが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が始まって以来の急低下を記録した。南アフリカで新型コロナの新変異株が検出されたことを受け、安全資産への逃避が進んだ。

米2年債利回りは14.2ベーシスポイント(bp)低下の0.502%。低下幅は2020年3月以来の大幅なものとなった。

10年債利回りは16.8bp低下し1.477%。11月初旬以来の低水準を付けた。

30年債利回りは14.2bp低下の1.829%となった。

バイデン米大統領が22日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長を続投させる方針を発表して以来、債券利回りは週を通じて上昇してきた。

この日はイールドカーブがスティープ化し、5年債と30年債のスプレッドはパウエル氏再任の報道が流れる前の水準にまで再拡大した。

また、FRBによる利上げ観測も後退。CMEのフェドウオッチによると、短期金融市場が織り込む来年6月に少なくとも25ベーシスポイント(bp)の利上げが実施される確率は58.5%となった。感謝祭の祝日前の24日は82.1%だった。

10年物インフレ連動債(TIPS)のブレークイーブン・レートは2.553%。

米金融・債券市場:[US/BJ]

<株式> 南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株が確認されたことを受け、薄商いの中、急落して終了した。

世界保健機関(WHO)はこの日、南アで検出された新変異株「B.1.1.529」を「懸念される変異ウイルス(VOC)」に指定。VOC指定は5番目で、ギリシャ文字の「オミクロン」を割り当てた。この変異株に対し既存のワクチンの効果があるか調査が進められる中、欧州連合(EU)や英国を含む世界各地で渡航制限を強化するなどの動きが広がっている。

こうした中、投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は3月初以来の水準に上昇した。

新変異株への懸念から、クルーズ運航大手のカーニバルロイヤル・カリビアン・グループ、ノルウェージャン・クルーズ・ライン・ホールディングスは10%を超えて下落。ユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空などの航空株も急落した。NYSE・Arca航空株指数は6.45%下落。1日の下落率としては2020年9月以来最大となった。

小売株は2.04%下落。この日は年末商戦の幕開けとなる「ブラックフライデー」にあたったものの、新変異株への懸念が重しになった。

S&P500銀行株は3.87%安。新変異株を巡る懸念が高まる中、米利上げ観測が後退したことを反映した。

エネルギー株は原油安を受け4%下落した。

一方、新型コロナワクチンを製造するファイザーとモデルナは上昇した。ファイザーは6.11%高の54ドルと、過去最高値で終了。モデルナは20.57%上昇した。

コロナ禍の需要の恩恵を受けるいわゆる「巣ごもり銘柄」にも買いが入り、動画配信サービス大手ネットフリックス、フィットネス機器販売のペロトン・インタラクティブ、ビデオ会議サービスのズーム・ビデオ・コミュニケーションズなども上昇した。

ただ、売りは広範に及び、S&Pの主要11部門ではヘルスケア以外は全て1%を超えて下落。ヘルスケアはファイザーとモデルナ<が上昇したことで、下げは0.45%にとどまった。

グローバル・インベストメンツ(アトランタ)のシニアポートフォリオマネジャー、キース・ブキャナン氏は「まるでデジャブだ」とし、この新変異株について悪いニュースが出てくれば、売りが加速するとの見方を示している。

ニューヨーク証券取引所では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を5.84対1の比率で上回った。ナスダックでも3.96対1で値下がり銘柄数が多かった。

米国株式市場:[.NJP]

<金先物> 新型コロナウイルス変異株への警戒感からリスク回避の買いが先行したが、利益確定の売りなどに押され、小幅続伸にとどまった。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前営業日比1.20ドル(0.07%)高の1オンス=1785.50ドル。一方、週間では66.10ドル(3.57%)安となった。

南アフリカやボツワナで確認された新たな変異株はデルタ株より感染力が強く、ワクチン耐性を持つ可能性が指摘され、アジアや欧州の主要市場で株安となるなど投資家のリスク回避姿勢が強まった。安全資産としての金買いが先行し、相場は早朝に一時1816.30ドルまで上昇。ただ、買い一巡後は利益確定の売りや週末要因の売りなどに押され、朝方の上げ幅を縮小。前営業日清算値を挟んでもみ合いとなり、心理的な節目である1800ドルを割り込んだ。

この日は米感謝祭(25日)休場明けで短縮取引だった。

NY貴金属:[GOL/XJ]

<米原油先物> 南アフリカなどで見つかった新型コロナウイルスの変異株に対する懸念が広がる中、大幅続落した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物の清算値(終値に相当)は前営業日比10.24ドル(13.06%)安の1バレル=68.15ドル。2月物は9.97ドル安の67.84ドルとなった。

中心限月の下げ幅としては、新型コロナの感染が拡大した2020年4月20日(55.90ドル)以来最大。清算値が70ドルを割り込んだのは9月10日(69.72ドル)以来で、10月26日に付けた清算値(84.65ドル)から16.50ドルから下げた。

新たな変異株が経済活動の停滞や燃料需要の鈍化を招く恐れがあるとの懸念が高まり、この日の原油相場は世界的な株安連鎖と歩調を合わせる形で急落。クリスマスシーズンを控える中、各国・地域は入国制限など規制強化に踏み切る方針を表明しており、景気回復の遅れに対する警戒感も広がっている。

米原油相場の急落は、日本のガソリン価格の下落につながる可能性がある。また、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」の閣僚級会合が12月初めに開かれるが、同会合の判断にも影響を与えそうだ。

米国は今週、日本や中国、インド、韓国、英国と協調し、石油備蓄を放出すると発表していた。

NYMEXエネルギー:[CR/USJ]

ドル/円 NY終値 113.31/113.34

始値 113.89

高値 114.2

安値 113.06

ユーロ/ドル NY終値 1.1317/1.1321

始値 1.1276

高値 1.133

安値 1.1275

米東部時間

30年債(指標銘柄) 14時30分 101*03.00 1.8274%

前営業日終値 97*27.00 1.9710%

10年債(指標銘柄) 14時30分 99*00.50 1.4816%

前営業日終値 97*17.00 1.6440%

5年債(指標銘柄) 14時30分 100*12.50 1.1693%

前営業日終値 99*17.50 1.3440%

2年債(指標銘柄) 14時30分 99*31.50 0.5078%

前営業日終値 99*22.88 0.6440%

終値 前日比 %

ダウ工業株30種 34899.34 -905.04 -2.53

前営業日終値 35804.38

ナスダック総合 15491.66 -353.57 -2.23

前営業日終値 15845.23

S&P総合500種 4594.62 -106.84 -2.27

前営業日終値 4701.46

COMEX金 12月限 1785.5 +1.2

前営業日終値 1784.3

COMEX銀 12月限 2310.7 ‐38.9

前営業日終値 2349.6

北海ブレント 1月限 72.72 ‐9.50

前営業日終値 82.22

米WTI先物 1月限 68.15 ‐10.24

前営業日終値 78.39

CRB商品指数 226.7289 ‐11.6458

前営業日終値 238.3747

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