写真は今年1月、楽天モバイルの新料金プランを発表した際の三木谷浩史・楽天グループ会長兼社長(写真:つのだよしお/アフロ)

(大西康之:ジャーナリスト)

 楽天グループは5日、ドイツの携帯電話市場に「第四のMNO(自前の回線を持つ移動体通信事業者)」として参入する1&1に対し、楽天が開発した携帯電話の完全仮想化技術「楽天・コミュニケーションズ・プラットフォーム(RCP)」を提供することで合意した、と発表した。

 日本の通信企業が海外に挑むのは「iモード」を世界に広げようとしたNTTドコモ、スプリントの買収で米国市場に参入したソフトバンクに続き3社目で、ドコモとソフトバンクは国際標準の厚い壁に跳ね返された。楽天が「三度目の正直」となるか、注目される。

世界に先駆けて実用化した技術

 楽天は2020年春、日本国内で、世界に先駆け完全仮想化のネットワークによる携帯電話サービスを開始した。この技術を世界中の通信会社に販売できるようパッケージ化したのがRCPであり、1&1が最初の顧客になる。

 1&1はドイツの大手インターネット・プロバイダー。2019年にドイツ政府から5G(第五世代携帯電話)の周波数帯域を獲得し、ドイツ・テレコム(ブランド名はTモバイル)、テレフォニカ(同O2)、ボーダフォン(同・同)に次ぐ、第四のMNOとして新規参入することが決まっていた。楽天のRCPを採用することで設備投資額を引き下げ、コスト競争力を高める狙いだ。

 楽天は1&1と10年契約を結び、ネットワークの構築から保守・運用までを請け負う。受注金額は2500億円〜3000億円と見られる。

 楽天の完全仮想化技術は、携帯電話のデータ処理の主役をハードウエアからソフトウエアに変える画期的な取り組み。通信会社は大手通信機器メーカーの高価な通信専用機器に依存せず、汎用サーバーでネットワークを構築できるため、通信インフラの設備投資を大幅に抑制できる。従来型の携帯ネットワークに比べ設備投資は4割、メンテナンス費用は3割安くなるという。

 すでに固定電話はIP電話によって仮想化されているが、携帯電話の仮想化は技術的に難しいとされていた。しかし2020年に第四のMNOとして携帯電話事業に参入した楽天はNTTドコモなど大手3社の牙城を切り崩すため、この技術に挑戦し、実用化にこぎつけた。